小泉悠教授はインタビューで下記のテーマについて話されます。

  • 米国はアジアに関心を失いつつあり、日本にとって「大変な危機」
  • トランプ政権のウクライナ戦争仲介がうまくいかない理由
  • 安全保障議論を巡って「左」と「右」の間の架け橋が今こそ必要
  • 「世界は大国だけで回っているわけではない」等

(インタビューの英訳はこちらへ 。)

小泉悠(こいずみ・ゆう)氏のプロフィル

准教授(国際安全保障構想分野)、ロシア・旧ソ連諸国の軍事・安全保障政策、国際関係論

 早稲田大学大学院修士課程を修了後、民間企業、外務省専門分析員などを経て、2009年に未来工学研究所に入所。2017年に特別研究員となり、2019年2月まで勤務。この間、外務省若手研究者派遣フェローシップを得てロシア科学アカデミー世界経済国際関係研究所に滞在したほか(2010-2011年)、国立国会図書館調査及び立法考査局でロシアの立法動向の調査に従事した(2011-2018年)。

 2019年3月、東京大学先端科学技術研究センター特任助教(グローバルセキュリティ・宗教分野)に就任し、2022年1月より同専任講師。2023年12月より現職。専門は安全保障論、国際関係論、ロシア・旧ソ連諸国の軍事・安全保障政策。笹川平和財団の上席フェローを兼任。

– – –

(カファト):ロシアの研究を始めたきっかけと現在の研究テーマについて紹介していただけますか。

(小泉): 私は「何でロシアの専門家になったか?」と聞かれると非常に困ります。それはなぜかというと、いわゆる一般的なロシア専門家のように、ロシアそのものに関心がある、そういうわけではなくて、私はもともと軍事オタクなわけですね。軍艦のプラモデルとかを作っていて、子供のお小遣いのほとんど軍艦のプラモデルに使っていて、そんな子供だったんです。

 ある時、どうも「ロシア人の作る兵器というのは変なのが多いな」と思い、非常に変わったものを作ってくると、船でも飛行機でもですね。だから「こんな変なものを作ってくるロシア人というのはどういう連中なんだろう」というところから関心を持ちました。

 そうなると資料を読むためにロシア語も勉強しなきゃいけないですし、歴史の事なんかもわかんなきゃいけないので、そういうことをやっているうちに、だんだんロシアの軍事の研究が商売になってしまった、というものすごく不真面目な経歴なんですよ。そして、毎日「赤い星」というロシア軍新聞をずっと読んでいく。それからロシア国防省のサイトに出てくる情報を毎日見ていく。

 もちろんロシアのメディアもチェックするし、軍事に関係する新しい法律が出れば新しい法律を読む、ま、いわゆるオープンソースインテリジェンス(OSINT)でロシアの軍事を分析する、ということをずっとやってきました。過去7〜8年ぐらいの間は人工衛星の衛星画像も使うようになりました。特にあまり欧米のアナリストが注目していない極東のロシア、日本の周辺のロシアの軍事的動向を衛星画像を使って、分析するというようなことをやってきました。

 それが過去4年間に関して言うと、もうその分析対象であるロシアが大戦争を始めてしまったわけですね。多分、これはそのパンデミックに遭遇したウイルス学者とかに近い立場だと思います。というふうになってしまったので、研究というよりはその日々の動きをウォッチするので精一杯というところです。ただ、ずっと動きを覆ってるだけだと振り回されちゃうので、わざと時々歴史を遡って、例えばロシアのエアパワー思想の歴史ということを最近ちょっと研究して航空自衛隊の雑誌に書いたりとかしています。

 それから地図の雑誌があるんです。日本の地図専門家が読んでいる「地図ジャーナル」という雑誌があるんですけれど、そこから軍事と地図の関わりについて書いてくれって言われたので、その雑誌のためにロシアにおけるその軍隊の地図作りの歴史というのをちょっと調べて書いてみたりしています。最近はそんなことをやっています。

(カファト):日米関係が複雑化していると思います。特にトランプ政権の関税が日本経済に大きな打撃を与えています。トランプ大統領が10月に日本を訪問し、高市首相が日米関係のセンシティブなところにあまり触れずに日米同盟の連携をアピールしました。日米関係は果たして健全なものであると思いますか。

(小泉):日本とアメリカの間にはもちろんずっと関係の波はあったと思います。そもそも80年前は戦争していた中ですし。でもその後は、アメリカに占領されて日米安保条約ができて同盟国になって、さらにこの同盟の対等性を高めようとしてきた。

 特に過去30年間ぐらいは対等の日米関係を築こうとしてきた、という意識が日本人にはあると思います。そもそも、実は冷戦時代には「日米同盟」という言葉もほとんど使っていなくて単に「日米安保体制」という言い方をしていたんですよ。だからここにはちょっとアメリカに日本は占領されるという意識も入っていたと思います。

 それをもうアメリカのさすがに占領ではないという意味で、「日米同盟」という言葉を使ってなんとか対等の日米関係を築こうとしてきたんです。

私は今、日米関係が迎えている最大の危機は、アメリカがアジアに関する関心を失いつつあるんじゃないかということですね。

小泉悠氏

 つまり、従来日本のナショナリズムの中にあったアメリカに対する見方というのは、一つは、「アメリカが日本を占領している」、「私たちの自由がアメリカによって制約されている」という考え方がありました。日本の左翼的な人の中でも、「アメリカが戦争を起こしている」と、「朝鮮半島も台湾海峡もインドシナ半島もアメリカがいなければ平和なはずだ」という見方があったわけです。いずれにしても、これらのその見方というのは、アメリカがアジアに居たがってるということを前提にしていると思います。

 ところが今度はアメリカが「いや、そんなに私たちの事が嫌いなんだったらもう帰ります」と言い出してしまったわけですよね。そうなると、やはり私なんかはちょっと慌てるわけです。やはり日本の安全保障とか外交戦略というのがアメリカの同盟国であるということを前提に組み立てられてきた。

 これ自体は冷戦時代も全然揺るがなかったんです。貿易摩擦みたいなものがあったりとか、アメリカが急に中華人民共和国を承認してしまうとか、いろんな日米間の波風はあったにしても、「アメリカは常にアジアに居る」、「我々はアメリカの同盟国である」など、ここは変わっていなかった。

 この前提がこの過去80年間で初めて変わるかもしれない。少なくとも、私たちがこれまで慣れ親しんできたような日米関係ではないものに変わろうとしていることはもう明らかだと思います。という意味で、私は大変な危機だと思っています。

 逆に言えば、トランプ政権の関税政策云々というのは、これまでも日米関係の中で乗り越えてきた問題であって、これは私はテクニカルに解決可能だと思います。日本の役所にも政治家にもそういう経験があるし。でもやっぱり日米安保体制は揺らぐかもしれない、というのが初めてのことです。これが私は一番戸惑いだと思います。

(カファト):ウクライナ戦争の行方が気になります。現時点では、ウクライナ戦争はどのような状況か教えていただきたいです。欧州諸国がウクライナ支援に腰を入れても、果たして本当にウクライナが勝てると思いますか。一番リアルな結末はどうなるかご意見をお聞かせください。

(小泉):まず、ウクライナの戦争においてウクライナが勝つとはどういう状態かということが大事になると思います。道義的に見て望ましいのは、ウクライナ領からロシア軍を追い出すということだと思います。なるべく早く、なるべく少ない犠牲でウクライナ人もロシア人もあまり死なないようにする、それができれば一番良かったと思います。しかし、もはやそうはなっていないことは明らかです。今戦争が三年10ヶ月やっているんです。実はほとんど第一次世界大戦に近い長さです。

 それから第二次世界大戦における日本とアメリカの太平洋戦争よりも長いです。この戦争というのは、もうすでに巨大な長期戦争になっていて、その中で人の命もどんどん失われていく。

 で、もう一個大事なことは、ウクライナ軍が2023年の反撃作戦に失敗しましたので、ロシア軍を追い出すということが、見通しが立たないということです。2024年からはずっとこの東部のドンバス地方で、ウクライナ軍はロシア軍に圧迫され続けている。ロシア軍がジワジワ前に進んでいっているという状況が続いています。この先どうなるのかということですけど、一つはロシア軍の優勢という現実は多分変わらないだろうと思います。ウクライナはこれから先も押され続けるだろうということです。

 しかし、もう一つ重要な問題は、ロシアがウクライナに対して国家全体として勝利できるか、これは難しいだろうということです。端的にいうと、ロシア軍がキーウを占領できるか、などもあります。その上でロシアがずっと言い続けてきた、例えば、「ウクライナの軍事力を大幅に削減せよ」や「政権交代をさせろ」といった目標を押しつけられるかどうか、これがロシアにとっての勝利なんです。だからこの意味で言うと、ロシアにとっての勝利もなかなか難しいだろうと思っています。

 これを裏返すと、ロシアからの戦略的な要求を拒否できれば、私はそれをウクライナの勝利と言えるだろうと思っています。2022年の2月24日にこの戦争が始まったわけです。その日にプーチンは戦争目的を国民に対してビデオメッセージで説明してるわけです。それは非ナチス化と非軍事化と中立化という三つの目的でした。

 非ナチス化というのは、ウクライナがナチスだということを前提にしているわけですけど、もちろんウクライナはナチスではない。だけれども2014年に起きた政変のことをロシア政府はずっと「アメリカに支援されたナチスのクーデターである」と。だから、プーチンは絶対にウクライナの今の政府のことを「政府」と呼ばないわけです。ガスウダールストヴォ(Государство)とかブラスチ(власть)という言葉を使わなくて、単に「レジーム」としか呼ばない。「違法な連中がウクライナの首都に居座っている」という認識なんです。だから、「まずこいつらを排除する」ということを「非ナチス化」という言葉で言っているわけです。ゼレンスキーは追い出す、逮捕する、殺しちゃうというところまで多分頭に入っています。軍隊は大幅に縮小する。

 で、「中立化」という言葉はNATOに入らないということも含めていますけど、それ以外の意味もあります。開戦当初にロシアが突きつけた停戦条件文書を見ると、もうロシアに対するあらゆる国際訴訟を取り下げるとかが入っています。それから制裁を解除するということも書いています。だから単に中立でいるというよりは「ロシアに逆らわない」ということを、この中立化という言葉は含んでると思います。

 私が一言で言うと、この戦争のロシア側の目的というのは、ウクライナをロシアの「保護国」にするということだと思います。自分の支配下における国ということですよね。そういう状態にするということが目的です。ちょっと別の言い方を言うと、ウクライナの主権を制限するということですね。

トランプ政権のウクライナ戦争の仲介政策があまりうまくいっていない理由というのは、このプーチンの戦争目的を無視しているから。

小泉悠氏

 これをずっとプーチン政権はトランプに対してはある一言で表現していて、それが「紛争の根本的原因」という言葉なのです。ロシア語では「Первопричина」というふうに言っていますけれども、何が根本的な原因があるんだと。それが今言った「非ナチス化」であり、「非軍事化」であり、「中立化」だと思います。これを達成できるかできないかの戦争をしているのであって、前線で多少前進できたかできなかったかって競争してるわけではないんですよ。ここで勝敗が決まると。

 で、ここから大事なのはやっぱりトランプ政権のウクライナ戦争の仲介政策があまりうまくいっていない理由というのは、このプーチンの戦争目的を無視しているからじゃないかと思います。理解していないとは思いません。トランプさんも彼の側近達もプーチンがウクライナを支配しようとしているということはよくわかっていると思います。なんだけど、トランプ政権から出てくる話はどこに線を引くかという話がとても多いわけです。これだけだと、そもそもプーチンは関心を示さないだろうし、 ウクライナ側からしても、「その線を引いた後の安全をどうするんだ」ってより根本的な問題で不満が残るわけです。

 だから、なかなかトランプさんが非常に熱心にこのウクライナ問題に取り組もうとしながらも成果が上がらないんじゃないかというのが私の考えです。

(カファト):中国の動きも無視できないと思います。習近平主席の四期目あたり台湾への侵攻が予測され、その通りに展開したらロシアが直接に参戦しないとか思う人がいます。と言われても、ロシアはこのような出来事をチャンスに使って、日本や米国に対して何かを仕掛けていく可能性は否定できないと思います。台湾への侵攻が起きたらロシアの役割はどのようなものになりそうですか。

(小泉):台湾有事におけるロシアの役割は、おそらく相当限定的なものになるだろうと思っています。まず大前提として、2027年に台湾有事という考え方はどこまで正しいのかということですね。なんとなく私はこの話を聞くたびに、オリンピックの話を聞いているような感じがします。「2027年に台湾有事オリンピックがあるから、みんな頑張って練習しような」みたいな、なんかそんなふうに聞こえます(笑)。そういうもんじゃないだろうと。当然のことながら、習近平は戦争というオプションも持ってますが、そうではないオプションも持っています。オプションを選ぶかというのは、例えば日本やアメリカがどう対応するかということにかなりかかってくると思います。

 だから私たちの心構えとしては、2027年か2028年か分からないけれども、戦争が起こる可能性は確かにあると。だから、その2027年がなるべく後になるようにするとか、2027年がずっとやってこないようにするということが、私たちの戦略的な目標になるだろうと思っています。

 その上でなんですけど、仮に2020年代の後半に、中国が大規模な武力行使を台湾に対して行なったと仮定します。その時点で、果たして極東のロシアがどのぐらいの軍事力を持っているだろうかということなんですよね。私の予測では、2020年代後半、特に2027年ぐらいはウクライナでの戦争が終わっているかどうか、まだ極めて怪しいと思います。続いている可能性がある。こうなると、ロシアの軍事力の大半は国土の西側に集中していると考えなければいけないと思います。

 もともとウクライナ戦争が始まる前でさえロシア軍の東部軍艦区(Eastern Military District)に置かれていたロシア軍の兵力は80,000人ぐらいだろうというのが日本の防衛省の推定でした。すごく少ないです。日本の陸上自衛隊でさえ、現状149,000人です。中国の人民解放軍の陸軍は百万人以上いるわけですよ。そんなのと比べると、実は戦争が始まる前でさえロシアの極東の地上兵力というのは、アジアで一番小さかった。

 それが戦争によって更に減少してるわけです。この状態が変わらないとロシアが極東でできることというのはすごく制約されると思います。やりたいことがあったとしても、能力の方が足りないという可能性が非常に高いと。で、他方で今回の戦争が始まってからも、ロシアの海軍や空軍はほとんど減っていません。一部ではあの新型の軍艦が配備されたりしていますので、海上戦力は僅かに近代化が進んだと言えるでしょう。

 だから、台湾有事で何かロシアが関与しようと思ったら、海と空で何かをするということしか考えられないだろうと思います。例えば、ロシアの空軍が台湾海峡まで南下していって、中国と一緒に台湾を爆撃するということがあり得るだろうか。多分無いだろうと。そこまでのことは、今回の戦争で中国もしてあげていない。

 中国が今ロシアにしてあげていることが、おそらくロシアが中国にしてあげることとほぼ同じぐらいになると思います。ということを考えると、私は軍事的にロシアが台湾有事の時にできることというのは、例えば、日本の北の方にアメリカや日本の軍事力を引きつけておくというような支援はできるかもしれませんね。有事が起きた時に、例えばオホーツク海でロシア軍が大演習を行うとか、日本海で疑わしい動きをする。

 カムチャッカ半島に海底工作用の原子力潜水艦を配備します。従来は北方艦隊にこういう海底工作用の原子力潜水艦を持っています。この潜水艦のお腹から更にこの子供潜水艦が発進していくと。で、この子供潜水艦にはこういうあのかカニみたいなロボットアームがついていて、これで海底にセンサーを設置したり、アメリカの海底センサーの場所を探したり、それからミサイル実験の残骸を回収してくるとか、そういうことをやっている部隊です。また海中で海底ケーブルに何か盗聴器を取り付けるとか、場合によってはケーブルを切っちゃうとか、そんななことができると言われています。

 従来大西洋にしかこういう部隊がいなかったんですけど、もう太平洋艦隊にもこういう部隊が作られるということがほぼ確実だと思われています。そうなると、2020年代後半台湾海峡有事が起こった際に、例えば日米間の重要な海底ケーブルをこういう潜水艦が切るとか、台湾に繋がる海底ケーブルが全部切られちゃって、台湾が孤立無縁になるとか、こういう工作にロシアが関与するってことは考えられるかもしれないなと。

 でも多分ロシアが中国の戦争に対してできる一番大きな貢献はエネルギーを供給し続けることだと思いますね。シーレーンに依存せずに安定した陸上から安定した量と額のエネルギーを供給し続ける。多分中国にとってはこれが一番ありがたいんじゃないかと思いますね。

 もっと言うと、ロシアにとってはそれはチャンスになるかもしれません。つまり今ロシアは世界にエネルギーを売ることがだんだん難しくなっているわけですよ。一番大きな顧客だったヨーロッパがロシアのエネルギーをどんどん買わなくなって、特にその戦争が始まってから、リパワーEU(Repower EU)という計画を作って、もう「ロシアのエネルギーから脱却するんだ」ことを戦略的な目標にしたわけです。最初できるのかなと思っていたんですが、本当に石油や石炭は止めてしまって、天然ガスもどんどん減らして、今回出てきた新しい制裁パッケージとかの中ではもう来年から再来年にかけてほんとに全部の天然ガス止めちゃうって言っているわけです。だからEUは本気であると。

 あとはインドや中国になるべく買ってもらうしかないわけです。しかし、インドはアメリカの制裁を恐れてロシアのエネルギー購入をかなり減らしていると。だから、大口顧客は中国なんですよね。ところが中国は中国でもちろんボランティアでロシアのガスを買ってあげているわけじゃないわけですから、それなりに見返りを求めると。

 で、特に期待されている新しい「シベリアの力2」というパイプラインがあります。これに関しては十年以上話しているんですけど、話がまとまらないわけです。一つはこのパイプラインの中を流すガスの価格を一立方メートル当たりいくらにするかということが折り合わない。

 それから中国側はそのパイプライン敷くんだったら敷くための建設費用を全部ロシアが払えって言っているんですよね。こうなると儲けが薄くなっちゃうから、ロシアはそんなことしたくない。もしも私がクレムリンの人間だったら、あるいはガスプロムの重役だったら、「いや、中国が台湾に攻め込んで世界から孤立している今こそ、ロシアの条件でガスを売りつけるチャンスだ」と考えるかもしれません。そういう意味ではロシアもこの台湾有事というか、中国が台湾を巡る政策で世界の中でどういうポジションになるのかってことは関心があるだろうとかは思います。

(カファト):最近ロシア政府から色々な動きが見られていますが、例えば人に対する制裁などがあります。実は小泉先生も対象になっているようです。その背景について少しお話しいただけますか。

(小泉):ロシア政府はこれまでに計五回に渡って日本人に対する入国禁止措置を出しています。合計499人の日本人がロシア政府から無期限入国禁止というふうに言われています。一番最初の入国禁止パッケージは戦争が始まった年2022年に発動されています。国会議員が多かったですけれども、他にも学者とかマスコミの人とか色々な人が制裁対象になりました。

 この2022年の時は私は対象にならなかったんですね。私はかなりテレビや新聞でロシアの侵略を厳しく批判したので多分対象になるだろうと思っていたんですけど、入らなかった。代わりにあまりロシアのことに言及していないような大学の先生が入ったりしたんですね。これ何なんだろうって見てみると、一つはみんな教授なんです。

 プロフェッサーの肩書がある人しか、ロシアは制裁対象にしない。当時私はまだ特任助教か講師でした。つまり、あまり偉くないので、あまり偉くないやつを制裁対象にしてもしょうがないんですよね。ですので、私はまだあの時はロシア政府から相手にしてもらえなかった。

 その後は、しばらくは学者は制裁対象にならなくて政治家だったりとか、それからトヨタの会長とかですね、つまり、産業界の大物ですね。そういう人達を制裁対象にして、アメリカやヨーロッパと一緒にロシアに経済制裁をかけ続けると、「お前たちはロシアで商売ができなくなるんだぞ」というメッセージを出してきたわけです。で、ロシア外務省のザハロワは報道官も「トヨタはロシアで車を売れなくなるんだぞ」というふうにあからさまに日本に対する経済的な脅しをかけてきたわけですよ。

 ただ、私は一日本国民として大変誇りに思いますけれども、そういう脅しを受けても、日本政府はロシアに対する制裁を撤回していません。むしろ厳しくしているところなわけですね。それはやはりロシアの侵略を見過ごして、ロシアでトヨタを売ることは正しいのか、あるいはロシアの侵略を見過ごして、ロシアの安いガスを買うのが本当に日本の安全保障に資するのかというと、ごく短期的にはそれでいいかもしれませんよね。

 だけど、そういう世界において、日本が果たしてこれから先も安全に商売をしていけるかどうかって考えると極めて疑わしいわけです。仮に日本がウクライナみたいな立場になったら誰も助けてくれないかもしれないと。

 それよりも「中国から車を買ったり、中国にエネルギーを売りつける方がいいじゃないか」とみんなが考えるかもしれないわけですよね。そういう世界は困っちゃうので、やっぱり日本としては短期的にちょっと損するかもしれないけれども、侵略をした国に対しては、そういう国とは、「日本は商売できません」というメッセージを送った。これ、戦後の日本がやった外交政策の中で非常に誇らしい良いものだと私は思っています。で、それがあまり効かなかったので、ロシア政府としては、多分迷っていたでしょう。今回日本でこう高市政権ができたというタイミングで、新しくメッセージの出し直しを始めたんだと思います。

 一つは、高市政権は安倍政権の後継者であるということを自認しているわけです。高市さん自身も安倍さんとは大変関係が深かったわけですし。という中で、ロシアからすると「高市とはうまくやっていけるかもしれない」という期待があると思います。安倍の時みたいに何回も首脳会談をやって「経済協力の話をして」ということができるかもしれない、という期待がありつつ、でも、高市政権は同時に安全保障積極派なので、変な方向に転がっていくと、ロシアに対してすごく厳しい政権になるかもしれない。例えば、岸田政権みたいになっちゃうかもしれないとそれは困ると思ったので、軽いジャブを打ったと思います。それが今回の私を含む30人の日本人の入国禁止だと思います。

 その中で私のようなロシアに対して非常に厳しい専門家がロシアから入国禁止を受けるというのは、全然不思議ではないと思います。特に日本にもロシアにもダメージはないと思うんですよ。私がロシアに行けなくなったぐらいでは。

 だけど、同時に今回のロシアの制裁措置には、産業とか経済に関わる人は入っていないのです。ほとんど研究者とメディアの人ばっかりだから。あくまでもこれはメッセージ、ウォーニングショットを撃っただけであって、「これ以上高市政権がロシアに厳しいことをすると、もっともっとまずいことが起きますよ」というメッセージを送ってきてるように私には見えます。

(カファト):アメリカの代わりに日本が国際秩序のリーダーシップを取っているところもあると思いますので、強い国際秩序の代表に対してウォーニングショートを撃ったということも不思議ではないかもしれませんね。

(小泉):ウォーニングショットのターゲットになったというのは非常に光栄な話です。この辺に今穴が開いているかもしれません (笑)。

(カファト):非常に緊張感が高まっている東アジアですが、紛争が起きないようにどうすればいいですか。ロシアや中国、北朝鮮など色々あると思いますが、今の世界には一番効果的な抑止力は何ですか。それに関連する質問ですが、現在のトランプ政権の外交政策はそういった紛争の抑止するところに貢献していると思いますか。

(小泉):私は戦争を抑止するというのはとても複雑な仕事だと思います。どの戦争がどういう方法で抑止されるかというのは、正直言ってよく分からないところが多いわけです。もちろん、基礎にあるのは軍事力の均衡数とか兵器の性能とか訓練の度合いとかってことなんですけど、それさえ保っていれば戦争が起きないのかというと、そうではないということを我々日本人自身が85年前に証明したわけですね。絶対アメリカに戦争に勝てるわけがないのに、なぜか真珠湾を攻撃してしまう。自殺行為だとみんな分かっているのにやってしまったわけです。

 だからこれは軍事力というその数で測れる指標さえを保っておけば抑止が保たれるわけではないということの、一つの好例だと思います。

軍事力という手段に加えて、何か他にもミッシングリンクがあって、それを埋めないとうまく抑止というのは機能しないんだと思っています。

小泉悠氏

 で、軍事力って多分国家が発揮する力の中で最も強い力だと思います。だけど、この強力な力は強力である分、あまり細かいところにまでは手が回らないわけですよね。この細かい隙間を埋めるような、より弱い力というのは私は大事なんじゃないかと思います。素粒子物理学の中でも強い力と弱い力というのが想定されますけれど、これは国家のツールも同じなんじゃないかと思います。

 それは、例えば経済的な相互依存みたいなものであるかもしれないし、外交的なチャンネルであるかもしれませんし、非常に弱い力かもしれないけど、人々の繋がりというのもあると思っているのです。

 だから私はそういう国家の持っている全部の力をうまく統合するということを、まず日本はやらないといけないなと思っています。従来はそういうことをあまり考えなくても良かったというか、その強い力の部分をほとんどアメリカに委ねていたんですよね。強い力は、アメリカが発揮するものである、と。日本は一ヶ月負けなければいいと、その間にアメリカはやってくると考えていた、と。代わりに、日本は経済であるとかで、アジアの国々と繋がっておけば、それが一つの日本の外交ツールになると思ってきたと思います。

 日本の場合は日本なりの強い力、軍事力の構想をどういうふうに再構築するかということが、これからアジアでは求められてくるのかなと思います。一方で、中国は今ものすごい勢いで強い力を作り上げているわけですけれども、代わりに弱い力がどんどん損なわわれていると思います。端的に言うと、アジアにおける中国の評判はものすごく悪くなっているし。今回中国は自分で日本行きの直行便をどんどん止めちゃいましたから、中国人の観光客もあまり日本に来なくなっちゃったと。

 前は東京を歩いていると、ここは日本人より中国人の方が多いんじゃないかと思う場所も多かったわけですけど。最近全然中国人の姿は見ないんですよね。なんだかとても寂しいんですよ。また来てほしいなと僕は思っていますし。

 お互いの経済的な交流もやっぱり強い方が戦争を躊躇わせる力にはなると思います。そういうものも全部ひっくるめて、お互いの強すぎるところをちょっと抑えて、弱すぎるところをもっと強化して、ということが求められるだろう、と。

 その中でアメリカですよね。私たち日本人の感覚で言えば、強い力というのは、アメリカによって担われると思っていた。やっぱりアメリカはやるときにはやる国である、と。本当に危機が起きたときには、アメリカは軍事力行使をためらわない。だからアメリカの強い力が抑止力を担保する要素はあったでしょう。定量化しにくいけれども、そういう信頼感というのは私はあっただろうと思っています。

 ところがこの信頼感は今かなり低下していると言わざるを得ないと思いますね。例えば私、トランプさんの発言を聞いているといつも思うのは、どうもこの人にとって軍事力というのは戦う道具ではなくて、脅すための道具なんじゃないかなって気がするんです。

 もともと軍事力にはどちらの効果もあってどっちも大事なんですけど、この二つは分けられないんですよね。戦う能力が高いから脅しの効果も高くなるということだと思います。

 ところが、トランプさんは就任当初の発言で、「強い軍隊があれば戦わなくてもいい」という言い方をしたりとか。それから今年の7月ですけど、ゼレンスキー大統領に対して、「モスクワやサンクトペテルブルグにミサイルをぶち込んでみたらどうなんだ」と。「それでプーチンはビビって停戦するんじゃないか」というふうに言うわけですよね。

 だから、やっぱこの人にとってはミサイルや大砲というのは戦うものじゃないんだな、と。交渉の道具なんだろうな、というふうに私は思うのです。で、それは大事なんですが、その力も上手く使うべきなんだけど、それだけではやっぱりこれ見透かされてしまうわけですよね。

 「トランプは戦う気はないんだな」と、「たくさん人が死ぬとか、経済的損失を被るのは怖いんだな」というふうに思われちゃったら、せっかくのアメリカの軍事力は強い力としての機能を果たせなくなってしまう、と。一般的にトランプはすごく乱暴な人物と見られるんですが、私はとても繊細な人なんじゃないかなという気がします。トランプさんはだから繊細さがむしろ弱みになっているんじゃないかと私は見ます。それは日本人から見るとやっぱり不安ですよね。

 日本の外交安保政策から強い力というセグメントがポロッと抜け落ちたような感覚があって、私たちは東京大学で日本人に対する外交安全保障世論調査というのをやっています。これは2024年から始めて年に二回行なってきたものです。アメリカが日本の安全保障に役に立っているとか、アメリカが危ない時に助けてくれるという信頼感はやっぱりだんだん下がっていっているんですよね。

 で、中国やロシアに対する脅威認識というのは高いんですよ。やっぱり中国は危ない。ロシア危ないとみんな思ってはいる。けどアメリカがもう助けてくれないかもしれない。普通に考えると、そこで、じゃ日本は自分で防衛力を強化するしかないと考えるはずなんですね。

 ヨーロッパは現にそうしているわけです。防衛費を増やす、核兵器の数を増やす、と。ところが、日本人はそれも嫌なんですね。中国も怖い、ロシアも怖い、アメリカが当てにならない。でも防衛費は増やしたくない。あるいは台湾や朝鮮半島で何かあったときに、日本が軍事的な関与をすることにも反対という人がとても多いです。

 だから、ここのところはまだ日本人自身が戸惑っているんだと思いますね。アメリカがいなくなったら、誰か他の人に頼ればいいのかなと思っているんだけど、そんな人はいないんですよ。いくら我々がこれまで実はアメリカに頼り切ってたか、そしてアメリカが替えの利かない存在だったか、ということを突きつけられてるんだけど、まだその事実をみんなあまりうまく咀嚼できていないな気がします。

(カファト):実は先生の最近出版された「小泉悠が護憲派と語り合う安全保障」こちらの方の本ですが、大変勉強になりました。日本国内に護憲派と右翼派の対立や分断が生じているように見えます。アメリカ国内に民主党対共和党のようなことも生じています。しかし、日本における現象と少し異なっているような気がします。日本国内の分断はどのようなものか教えてください。この本を書くきっかけは?

(小泉悠): まず私が考える日本国内の分断はずっとあるんですよね、日本社会の中に。根本的にいうと、大日本帝国あるいは大日本帝国がやった戦争をどういうふうに評価するかというところから出発していると思います。

 ただ、直接的なテーマになってきたのは、憲法第九条をめぐる問題なんですよね。特に憲法第九条第二項において、もう陸海空軍その他の戦力は保持しないとはっきり書いてある。つまり、もう普通に私は日本語のネイティブスピーカーですが、私から見ると今の自衛隊みたいなものも含めて何も持たないと憲法には普通に考えて書いてある。

 しかもこの憲法はアメリカの強い影響下で作られている。だから事実上アメリカによる武装解除をずっと日本人が押しつけられてるんじゃないかというふうにナショナリストは考えるわけですね。

 一方で、日本のリベラル派からすると、これは素晴らしい憲法であると、二度と日本が侵略戦争をしないための重要な安全装置である、これこそ安全保障だというふうに考える。だから根本的に憲法九条を巡って、全然違う見方が日本社会の中にあります。なので、安全保障の話をすると言っても多分外国で安全保障政策をめぐる論争がありますというと、「防衛費を増やすのか減らすのか」とか「徴兵制を敷くか敷かないか」とか、「アメリカの核兵器を国土の中に置くか置かないか」などそんな話になると思います。

 日本の場合、そもそもは「我が国は自分の国を自分で防衛してよいのか」というところから始まってしまう。「自衛隊を持って良いのかいけないのか」とかそこから始まるんですよ。だから外国に比べると極めて特殊な安全保障上のその論争があって、しかもその溝が全然埋まらないという環境があったと思います。

 私が「護憲派と語り合う」という本を出したのは、そういう状況にちょっと橋かけたいなという気持ちがあったんです。日本の護憲派とかナショナリストとかというのは、お互いがお互いのことを「とんでもないやつだ」と思っているわけですね。

 例えばよく言われるのは、護憲派というのはロシアや中国のスパイだみたいな言い方をする人もいますし、一方で、護憲派の人たちから見ると、その憲法を改正すべきだという奴らは戦争したいに違いないと、またきっとアジアを侵略する気だとかですね。戦争をして軍需産業を大儲けさせようとしてるんだとか言います。

 お互いのことをひどいやつだって言い合ってるわけですよね。で、私自身はどっちの人達も悪人だと思っていないんですよ。僕の両親はもう本当に古典的な日本のリベラルで、憲法九条は絶対変えてはいけないという信念を持っていた人たち。

「あれもこれも外国の陰謀だ」、「こう言っているやつらは外国に買収されてるんだ」…こちらの斜めの対立の方がずっと厄介だ。

小泉悠氏

 だけど、私はその彼らの息子として思いますが、別にあの人達はロシアや中国の手先ではないし、悪人だとも思っていないわけですよね。一方で、私はその意見に同調するかというと、そうではなくて、憲法九条のもとでは現実的な安全保障ができないので、憲法は変えて、ただし民主主義を守る軍隊として自衛隊を保有すべきだという考え方なんですよ。

 私の考え方も別に間違っているつもりはありません。例えば私が軍需産業からお金をもらっているわけでもないです。もらっていたら、僕の住宅ローンはもう返していると思うんですけれど(笑)。別にみんな誰かのスパイなわけじゃないし、邪悪な考えを持っているわけでもないし、最終的には平和な日本がいいというゴールは変わらないと私は信じています。

 だから話せばいくら何でももう少し話が通じるだろうと、同じ日本人同士なんだからという極めてプリミティブな感情から私は出発しています。だから、こういう本も、実際に神戸の護憲派の集会に私が呼ばれて行って講演をした時の講演録と質疑応答を収めたものなんです。完全にお互いの意見が一致することはもちろんないにしても、話してみなきゃ分からない、と。

 あるいは夜一緒に居酒屋に行って酒を飲んでみれば、別にこの人は悪人でも悪魔でもないな、ということは分かると思います。単に意見が違うだけで同じ日本人である、ということが確認できる。たったそんだけのことなんですけど、意外とそういうことが、お互い分からなくて、想像の中でとんでもないひどいやつだとおも思い合ってるわけですよ。それが国家安全保障上の脅威ではないかと私は思います。だから、その分断を埋めたいと。

 日本の分断は古典的な冷戦時代からある分断が一つあるんですけど、これを一般的に右と左の対立というふう言うわけです。ところが私が何か見ていると、最近「斜め右上」とか「斜め左上」みたいな人たちが現れた気がします。つまり、ここで「斜め」というのはちょっと「エキセントリック」とかなんか変だ、ということを意味するわけですね。

 「斜め右」、「斜め左」というのはもっと陰謀論的だったりするわけです。「あれもこれも外国の陰謀だ」、「こう言っているやつらは外国に買収されてるんだ」というようなことを言ったりします。それからもっと科学的な根拠がない、スピリチュアルな話とか持ち出すわけですよ。こういう人たちの声の方がどんどん強くなっていて、古典的な右や古典的な左というのは、全然目立たなくなっている。つまり地味なわけですよ、右も左も古典的な人たちというのは真面目だから。話も面白くないし。

 なんかもっと陰謀論だったり、強い言葉を使ったり、そしてそういうのをユーチューブとかティックトックで流す人たちの方がどんどん世間の注目度が上がっていて主役になっていてしまう、と。従来あった対立軸にねじれが生じたと思います。これ「斜めになっている」、私はこちらの斜めの対立の方がずっと厄介だと思っています。

 古典的な右と古典的な左は、皆さん根はとても真面目な人たちなんで、話し合ったらなんとかなるんじゃないかという期待があります。今どんどん世論が斜め方向にねじれている中で昔の右と左はもう喧嘩している場合じゃないでしょう、というのは私の考えです。

(カファト):多くのアメリカ人は、残念ながら日本についても海外の状況についてもどうなっているか把握していないと思います。ロシアや日本、あるいは日米関係について特にアメリカの外交政策を担当する人に、「一言で言うと知ってほしいのはこれだ」というようなことがありましたら教えてください。

(小泉):まず、アメリカの方々一般に私がぜひおすすめしたいのは「外国語を勉強してみるといいと思いますよ」ということですね。私、英語とロシア語を勉強しましたけど、やっぱり言語というはものの考え方、ものを考える時のアルゴリズムそのものなので、違う言語を学ぶというのは、違う考え方を学ぶことなんですよね。なんか私はそれですごく頭の中の視野が広がったような感じがあります。というのが一点です。

 で、アメリカの外交政策を担当している方々に申し上げたいのは、「世界は大国だけで回っているわけではない」ということですね。この世界を大国だけに分けて考えるというのはとてもシンプルで分かりやすいと思います。いわゆるリアリズムという考え方は、大国を単位として大国同士が戦争しないためにはどうしたらよいかというところから出発していると思います。で、そうなると大国ではない国というのは、チェス盤の上の駒のように扱われがちなんですね。

私たち非大国の声をうまく聞く術をアメリカには持っていてほしい。

小泉悠氏

 私は、日本というのは軍事的な意味では大国ではないと思っていますし、日本がチェスの上の駒のように扱われがちであるということも知っているんですけど、じゃ私たちがアメリカやロシア、中国が言う通りに動くかというと、そうはならないわけですね。なかなか私たちはわがままな駒であるわけです。そのところをぜひ考慮に入れていただきたい。そうでないと時々この駒は言うこと聞かなくなってしまうかもしれませんし、チェスというゲームそのものが破綻してしまうかもしれない。

 大国が大きな力を持っている。お望みであれば大国がプレイヤーであるというふうに言ってもいいかもしれません。ところがこの大国がプレーしているゲームというのは駒の意見を聞きながら進めるチェスというのは非常に厄介なものなわけですよね。ぜひプレイヤーではない「駒」と呼びたければ「駒」と呼んでもよいんだけれども、私たち非大国の声をうまく聞く術をアメリカには持っていてほしい。

 ロシアはどうもあまりうまくないような感じがしますな。中国ももう少し上手なんじゃないかと思っていましたけども、どうもあまり上手じゃないということが最近判明してきました。せめてアメリカはそういうことが本当はもっと巧妙な国だと私は思っていますので、そこのところに私は期待をしてます。

(カファト):希望がまだ死んでいないということですね。心強い一言です。ありがとうございます。

– – –

The Japan Lensは小泉悠氏に深く感謝しております。先生のDeep Diveブログへのアクセスはこちらです。

Photo 1: 本サイトのインタビューに応じた小泉悠氏(25年12月)。

Photo 2: エストニアで講演する小泉悠氏(25年9月)。

なお、このインタビューの作成にあたってAIや機械翻訳ソフトなど一切利用していません。

One response to “小泉悠氏とのインタビュー 米国に「私たち非大国の声をうまく聞く術を」”

Trending