最近の米政治を見ると目まいするほど転換が激しいのです。6月末に大統領候補選の討論会がありました。共和党対民主党の対決で「トランプ氏の勝利」よりも「バイデン氏の敗北」という結論になりました。活気のないバイデン氏の振る舞いを目にした民主党員がパニック、「バイデンおろし」の運動が加速しました。そして、7月の政治集会で演説するトランプ氏に対して暗殺未遂事件が起こり、世界が唖然としました。その後、バイデン氏が撤退し、カマラ・ハリス副大統領にバトンを渡しました。こういった出来事を受け、米大統領選の現状はいったいどうなっていくか考えたいと思います。
トランプ氏の勢いが続く?
ペンシルバニア州の政治集会で生き延びたトランプ氏のパフォーマンスは歴史に残るほどでした。

耳が弾丸でかすめられたトランプ氏ですが、逃げる場であるはずでした。しかしSPに囲まれ、出血するトランプ氏が迷わず支持者に拳をあげて「ファイト!」と叫びました。
一気に「強い指導者」のアピールができ、ヨボヨボするバイデン氏と対照的でした。数日後、共和党全国大会に現れ、JDヴァンス氏を副大統領に指名したと発表しました。それに、億万長者のイーロン・マスク氏が「毎月トランプ候補に4500万ドルを献金する」と発表しました。多くの訴訟に直面しているトランプ氏の運命がわずか一週間で好転しました。
これこそがトランプ氏の強みです。追い詰められたところで戦う意志が湧いてくるタイプです。それに、生まれつきのショーマンで、常にカメラのレンズを意識しています。共和党がトランプ氏に操られ、個人崇拝の党になっています。強いイメージを持つトランプ氏ですが、今度マスク氏のような大金持ちの支持者から献金をもらい、まさに鬼に金棒です。「ほぼトラ」を主張する人たちが急増しました。
しかし、トランプ氏が抱えている弱みも多いということは忘れてはいけません。5月の有罪判決で共和党トランプ候補は「既決重罪犯」になってしまいました。多くの無党派の人は「有罪」の候補に投票したくないと思います。また、中絶問題で共和党が多くの女性を敵に回しました。特に高学歴の郊外に住む女性たちが権威主義の雰囲気を出すトランプ氏を選ぶことは考えられません。また、黒人の有権者にアピールしようとするトランプ氏でしたが、先日大失敗に終わりました。何よりも、多くの共和党政治家はトランプ氏のことを嫌っているのが本音です。基盤になっているMAGA支持者の熱がやっと下がったとは言えません。しかし、保守の砦であるアリゾナ州の共和党員は最近なんと「トランプ氏よりハリス氏の方がマシだ」など発言する人も出ています。「民」の支持を失ってしまえば一気に共和党議員の支持も失う可能性は十分あります。
ハリス氏の登場
一方、民主党候補のハリス氏はどうでしょうか。

撤退したバイデン氏が「次はカマラだ」と発表し、元検察官、検事、司法長官を経ったハリス氏は7月後半に民主党の支援を取り付けました。「やっと嘘攻撃を続けるトランプ氏に対抗できそうな人が出た」と多くの民主党員が歓迎しました。
女性のハリス氏ですが、中絶問題で悩む女性の支持に期待できそうです。また、左派の若い世代の間で人気になり、「ブラット・ギャル」などのブームに乗り、ソーシャル・メディアをうまく工夫採用しています。短期間で3億ドルの資金を見事に調達できました。そして先日、中西部出身のティム・ワルツ知事を選びました。中国通であるワルツ氏を選択したことが賢明だと評価する人は多いです。
では、ハリス氏は強みなのか弱みなのか、まだ分からないところもあります。例えば、ハリス氏はアフリカ・インド系のアメリカ人ですが、理論上、有色者の有権者に好かれてもおかしくないです。しかし、多くの有色者のコミュニティーは昔のままの伝統を保ち、女性差別者ではなくても「大統領というのはやっぱ男の仕事だ」と決めてしまう人もいるかもしれません。トランプ氏が白人至上主義者との関係があっても意外とマイノリティの男性から支持を得ています。反面、「初女性の大統領」という夢を見ている女性たちは圧倒的にハリス氏を選ぶ可能性があることは否定できません。
同様に、ハリス氏は外交の場における経験の乏しさがありますが、トランプ氏の前のアメリカでも決定的な「弱み」になっていたはずです。しかし、豊かな経験を持つバイデン大統領の外交政策は相次いで失敗しています。SNSでハリス氏のことで盛り上がっている若者はバイデン氏の外交政策を嫌う者も少なくないです。特にガザ地区の戦争で米国のイスラエルを支援する政策が挙げられています。ですので、ハリス氏はこの政策を廃棄し、違う方針を発表したら「経験の無さ」が強みになるかもしれません。なぜかというと、バイデン政権の失敗という遺産から解放されるからです。しかし、自信の無さでその政策をそのまま継いでしまうと逆効果になり得ます。
あと三ヶ月
トランプ氏は7月の勢いをわずか2週間で失ってしまい、必死に支持者を刺激しようとしています。これから中絶問題の対応が特に注目すべきところです。福音主義の支持者は中絶権を完全に違法化したいですが、宗教を重視しない共和党員の本音はこの問題に触れたくないのです。三つの点に絞ったら:
(1)女性の支持を得るか失うか、トランプ氏の中絶問題対応が鍵。
(2)熱心な支持者の機嫌を取るか無党派へアピールするか戦略の展開も。
(3)裁判における訴訟の結果も。
それからハリス氏ですが、もう一つの弱いところはメキシコとの国境の問題です。2021年に副大統領として中米に訪問し「米国に来ないで」という発言で、特に左派に厳しく批判されました。まとめますと:
(1)中・南米からの不法滞在者にどう対応するか。
(2)ガザ地区やイスラエルに関するバイデン政策をどうするか。
(3)SNSブームを実際の投票にさせるかどうか。
見ないといけないところが多いですが、特に上記のことがポイントだと思います。いずれにせよ暑い夏はしばらく続くでしょう。
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筆者は井口浩輔さんから貴重なフィードバックをいただき、感謝しています。なお、このブログの作成にあたってAIや機械翻訳ソフトなど一切利用していません。



