アメリカの共和党は「小さな政府」の良さを主張し、各州が自分に合う政策をとるべきであると思っています。政府の介入を望まず、企業の利益追求を支援する保守派の党です。(以前のブログに共和党について書きました。)これに対して、民主党は強い連邦政府( = 強い中央政府)の良さを主張し、社会保障や福祉、労働者を支援するイメージがありました。また、共和党の懲罰的な政策ではなく恵まれていない人のための教育や就職トレーニングなど低所得者を支援する党として知られていました。前回のPart 1にもこの点に触れました。

 しかし、クリントン氏とオバマ氏の当選で(それぞれ1992年と2008年ですが)上記のような伝統的な民主党の姿勢が変わり始めました。左からもっと中央のところにシフトし、場合によって右の共和党の政策を「そのまま」と言っていいぐらい採用することもありました。民主党の支持母体であった労働組合も徐々に労働市場から消えたので、その分「労働者」の党内の存在が薄くなりました。それに、左の進歩的な支持層も放置されたと思い、バイデン大統領をはじめ主流の民主党に怒りを覚えた有権者が増えました。実は、今でも増えつつあります

主流の民主党にがっかりする者

 民主党の伝統的な基盤にヒビが入っているし、党内の主流派と進歩派の間に摩擦が起きています。バイデン氏のような主流派の政治家は、福祉などを掲げる一方、企業のための政策も重視しています。そのような姿勢に特に不満を持つのは一言で言うと「ミレニアル世代」です。アメリカのミレニアルは学生ローンの返済で苦しみ、「アメリカン・ドリーム」の住宅購入もなかなかできず、親の世代より貧しくなる見通しです。

 また、米政府と企業が気候変動に関する危機感への対応が足りないと思い、将来への不安感を抱く世代です。それに、進歩的な若者にとって「社会的正義」がキーワードとなり、女性やマイノリティ、性的少数派が平等に活動できる社会を求めます。

 2020年に黒人男性のジョージ・フロイドが白人の警官に殺された事件もあり、白人男性を中心とした社会制度に対して爆発的な不満が噴火しました。ここに一つの大事なポイントがあります。この世代はイスラエル軍対ハマスの戦争を見て「これも白人による迫害だ」と抗議する者もいるし、進歩派の若者にとって海外情勢や外交政策がアメリカ社会の差別問題に結びついています。

 これも、イスラエルを「無条件支援」という政策を守ってきたバイデン氏にとって大きな問題になっています。最近、バイデン氏がイスラエルのネタニャフ首相を停戦させるために圧力をかけていますが、左派的な若者たちから見れば全く足りない努力です。「イスラエルへの武器支援を直ちに止めればいいのに」と思い、そうしてくれないバイデン政権への強い不満につながります。それに、中年のアラブ系のアメリカ人も同様です。

八方美人になろうとする民主党の失敗

 ここで、大事なポイントは、主流派はこの「社会的正義」を完全に無視しているわけではありません。実はLGBTQやトランズジェンダーなどが重視している内容を部分的に取り入れています。しかし多くの若者から見ればそれが煮えきれない程度の支援に過ぎないのです。が、イデオロギーのもっと中央のところにいる有権者から見れば、もうやり過ぎです。そう感じる人は特にブルーカラーの人たちです。例えば、党内の進歩派はトランズジェンダーが使えるトイレについて争うべきだと思っていますし、そういった取り組みに時間と資金を費やしている政治家もいます。これはいわゆるトランプ支持者との「文化戦争」の一環です。

 しかし、こういった姿勢は宗教を重視するヒスパニック系やラティノの人の価値と相容れないものです。それに、ヒスパニック系のアメリカ人も以外と中南米からの不法滞在者のことも気にしています。仕事が奪われてしまうことも恐れているし、「我々はアメリカに入るのにルールを守って列に並んだ」と言い、同じラティノなのに不法滞在者を厳しい目線で見ている人も多いです。にも関わらず、民主党が「労働者」や「ルールを守る者」よりも「トランスジェンダーや政治的に正しいグループ、不法滞在者」などに甘いし、優先しているように見え、党から離れてしまう人も多いです。場合によってトランプ側に移ってしまう人もいます。こういった民主党のトップはまさに「二兎を追う者は一兎も得ず」というジレンマに落ちています。

大統領選の行方

 現在、トランプ氏の勢いが増しているところで、バイデン氏が大ピンチです。バイデン陣営の選挙戦略は「バイデンはトランプよりましだ」というメッセージを発信しようとしていますが、十分に響くかどうかはまだ不明瞭です。例えば中年の無党派の人に響いても若者の心をつかむことができるかどうか分かりません。トランプ氏とバイデン氏の政策には実質的な違いは数多くあるのに、多くの左派の若者は「どうせ二人とも高齢の白人だ」で一緒に片付けてしまいがちです。また、米政府はSNSのTikTokが中国政府によってスパイの道具として使われると指摘し、ByteDance社経営のままなら禁止するよう呼び掛けています。TikTokで活動する多くの若者はこの政策にも不満を持っています。

 一つの民主党にとって有利なところは共和党の「人工中絶」政策への不満が強いということです。しかし、これは民主党の魅力を感じることよりも、むしろ共和党に対する嫌悪感の現れです。民主党にとって危険なシナリオはうまくアピールができず、多くの有権者が選挙という公民義務に「不参加」を選んでしまうことです。

 さて、バイデン大統領の再選の見込みを占うにあたって以下のような課題の進捗を見ることを推薦します。

  • 長年のイスラエル政策をうまく変更できるかどうか
  • メキシコとの国境や不法滞在者の問題を解決できるかどうか
  • 米経済やインフレ対策がうまくでき、実感のある良さになるかどうか
  • TikTokなどSNSを使う若者を味方にできるかどうか
  • 気候変動対策のビジョンを打ち出せるかどうか
  • 極右のアジェンダに左派の若者に危機感を与えることができるかどうか
  • 民主党リーダーたちが全体のミレニアル世代へ、バイデン政策努力を納得させることができるかどうか
  • 高齢者のバイデンは元気であると説得できるかどうか
  • 起訴に直面しているトランプ氏が「有罪」になるかどうか

 未完成のリストですがご覧の通り、米大統領選の結果を左右する要素が非常に多いです。今度、また民主党のバイデン氏が当選したらどのような対日政策が期待できるかについて見てみます。それを分かるためにバイデン政権の外交チームのメンバーを見てみたいと思います。

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Photo 1: バイデン大統領にとってガザでの戦争も悩ましい(ニュースウィーク)。

Photo 2: パレスチナ人と連帯を示すBLM(黒人の命は大切)のメンバーが多い(NPR)。

 筆者は井口浩輔さんから貴重なフィードバックをいただき、感謝しています。なお、このブログの作成にあたってAIや機械翻訳ソフトなど一切利用していません。

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